ステップファミリー:「親子を築く」難しさ
◇虐待での検挙、養継父多く/孤立回避へ悩み共有を
今春、痛ましい児童虐待事件が続いた。いずれも同居する男女の少なくともどちらかに、前の結婚で生まれた子がいる「ステップファミリー」。事件に発展した児童虐待では、検挙者のうち「実父以外の父」が実母や実父を上回っている。結婚の4件に1件が再婚の時代。社会に求められるものとは。
◆事件「自分の言うことを聞かないのが嫌だった」「泣きやまないので、ロープで縛り衣装ケースに入れた」??。大阪市西淀川区の小学4年生、松本聖香さん(当時9歳)と、兵庫県小野市の大塚颯太(そうた)ちゃん(当時4歳)が亡くなった事件。実の母の内縁の夫や再婚相手らは、警察の調べにこう供述しているという。
厚生労働省によると、07年度中に全国の児童相談所が対応した児童虐待相談のうち、主な虐待の加害者で最も多いのは実母(62%)。「実父以外の父」と「実母以外の母」は合わせて1割に満たなかった。しかし、子どもが死亡した虐待事件の養育者の内訳(06年)をみると、子連れ再婚や内縁、養父母が約2割を占める。
また、警察庁統計では、08年の児童虐待事件の検挙者319人のうち、養・継父と内縁関係の父が計118人。実母(95人)と実父(85人)を上回った。
国内のステップファミリー(ステップは継(まま)、義理の意味)の世帯数は調査されておらず、初婚家庭より虐待が起きやすいかは統計上は分からない。だが大阪市中央児童相談所で35年実務に携わってきた津崎哲郎・花園大教授(児童福祉論)は「(ステップファミリーは)虐待がエスカレートするスピードが速く、重篤化する危険性は高いと感じる」と指摘する。
◆「しつけなければ」
どこに難しさがあるのか。津崎教授は「継父母には親として、しつけなければという気負いがある。実父母も『継父母に早くなついて』と願うが、子どもは急に受け入れられず溝が生じる」。
例えば、母子が新たな父を迎える場合。子にとって継父は母を奪うライバルとなり、年齢にもよるが、反抗する子もいる。新しい父の愛情を試すため困った行動を取る「試し行動」や、お漏らしなど低年齢の言動が出る「退行現象」のある子も。そんな言動を継父が「しつけ」として厳しくしかると、子の態度が硬くなり、より怒りをあおる??。しつけが悪循環する典型的な例だ。
◆「監視」は逆効果
子育て支援の現場は、どうかかわればよいのか。ステップファミリーの実態を研究する野沢慎司・明治学院大教授(家族社会学)は「周囲が(ステップファミリーは)虐待のリスク要因と短絡的に考え『監視』するのは逆効果」と強調。童話の意地悪な「ママハハ」のイメージなどで、普段から偏見を感じている当事者も多い。「虐待を疑われるのではと意識すると、より悩みを打ち明けにくくなり、孤立が深まる」と話す。
だが、野沢教授は「子育てにかかわる専門家がステップファミリー特有の悩みを知っていることは有益だ」とも指摘する。夫の連れ子を受け入れられない継母が、知識のない相談員に「抱きしめてあげて」などと言われ、傷つく例もあるという。新しい「父」や「母」になる必要はない、思い出を積み重ね家族になっていくもの??。適切な助言が当事者の救いになるという。
◆当事者に交流の場
支援団体「ステップファミリー・アソシエーション・オブ・ジャパン(SAJ)」(兵庫県伊丹市)は01年から、元配偶者と子どもの面会などのサポート情報や、当事者の交流の場を提供している。
SAJの活動にかかわる東京都の主婦(39)は3年前、小2の息子を連れ、現在の夫(37)と再婚。交際当初、夫に、息子がだらだら食事していると「甘やかしているのでは」と指摘されたが、「知識として、継親が連れ子のささいな言動に困惑しやすいことも知っていたので、前向きに対処できた」。吉本真紀・SAJ代表は「虐待防止に限らず、子連れで再婚を考えるカップルや関係構築に悩む夫婦が、ステップファミリーの知識を得ると気持ちが楽になることも多い。当事者も社会も情報を知ってほしい」と訴える。
◇「初婚のような家族」目指さないで子育てに悩むステップファミリーは、どんなことを意識すればよいのだろうか。
野沢慎司・明治学院大教授は「初婚のような家族を目指すのはやめましょう」とアドバイスする。短時間で愛着関係は築けないし、実の父母と比べられたり、反発されることもある。小中学生3人の連れ子がいる夫と、10年前に再婚した兵庫県の主婦(42)は「母というより、担任教師という感覚」で子どもたちと接し、関係は良好という。
また、生活習慣の違いなどから、パートナーの連れ子が「きちんとしつけられていない」と感じる場合も多い。野沢教授は「継親が急に『親』として、しつけを担当すると問題が生じやすい。初めは実親が子育てに責任を持ち、継親はじっくり柔軟にアプローチするとよい」と説明する。【出典:毎日新聞】
子どもたちを守ることだけで手がいっぱいとなり、家族をつくる・家族を育て直すというような支援が、まだこの国には少ない。家族の形が多様化していく中で、家族への支援も、もっとするべきだと思う
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