追跡・発掘:国の在宅就労支援事業で技術習得 重度障害者たちNPO設立 /山梨
◇IT関連事業受託へ 「将来は納税が夢」
「納税できる障害者になりたい」−−。国による就労支援事業で技術を身につけた重度障害者たちがNPOを設立、IT(情報技術)関連事業を請け負うべく活動を始める。国は技術習得までは支援してくれるが、その後の仕事の紹介まではしてくれない。希望と不安が交錯する中でメンバーたちは自立への一歩を踏み出す。
NPOの設立を計画しているのは「バーチャル工房やまなし」(甲府市)のメンバー13人。いずれも視覚や肢体、知的障害などを持つ重度の障害者だ。
バーチャル工房やまなしは、厚生労働省の「重度障害者在宅就労促進事業」を委託された県障害者福祉協会が05年11月に設立した。
同事業は、重度障害を持つ人が自宅で仕事ができるよう技術習得を支援する制度で、05年度に厚労省が始めた。県内ではバーチャル工房やまなしのみが支援を受けている。国と県が支援スタッフの人件費を折半する。
メンバーは、スタッフによる訪問指導やインターネットを使った遠隔指導で、パソコンなどの技術指導を受けながら、「コーディネーター」と呼ばれるスタッフが企業から受注した、ホームページや点字名刺の作成などの仕事をしてきた。
しかし、同事業は教育プログラムとの位置づけのため、今月末で終了する。
同工房のコーディネーター、田崎輝美さん(43)は「せっかく技術を習得しても、重度障害者が個人で企業と交渉して仕事を取ってくることは難しい」と指摘する。「経費の支援など、行政に細く長く続けてほしいと思う部分はある。障害者がせっかく技術を身につけても、また自宅で孤立してしまいます」
事業の終了に戸惑うメンバーの姿を見て、田崎さんは現行のシステムを維持して仕事を受注できるよう、NPOを設立することをメンバーに呼びかけた。
多くのメンバーが賛同し、2月19日には設立総会が開かれた。近く県にNPO「バーチャル工房やまなし」の認証を申請する予定だ。
◇ ◇
メンバーの一人で富士河口湖町小立に住む鈴木勝則さん(48)は、18歳の時に交通事故で首の骨を折り、首から下がまひし、車いすでの生活を送っている。
20年以上、ハローワークで求職してきたが、企業から問い合わせがあったのは1回だけ。それも、通勤が困難との理由で断られた。障害者を雇用する企業はあっても、重度の人が仕事にありつけることは少ない。
しかし、鈴木さんは3年間の技術習得の結果、今では不自由な手を駆使してホームページなどの作成を手際よくこなす。「将来は納税できる障害者になるのが夢です」とNPOの設立を喜ぶ。
理事長となる予定の南アルプス市加賀美の小野智弘さん(68)は半身不随の障害がある。
現在は自宅でパソコンを使って名刺を作り、収入は年間10万円程度。しかし小野さんは言う。「重度障害者はどうしても『養ってもらっている』という負い目がある。たとえ数万円でも、自分の力で収入を得られる喜びは格別なのです」
今後は知人の農家と協力して、作物のネット販売などをしていきたい考えだ。だが、県内経済は深刻な不況に見舞われている。「不安はすごくあります。企業も大変でしょう。でも、私たちの活動を少しでも理解して協力してほしい」
◇ ◇
県障害福祉課は「在宅就労を支援する制度が何もなかったことを考えれば、現制度は評価できる。県としては今後、支援者ではなくパートナーとして協力していきたい」と話す。障害者に利用しやすいホームページ作成などに利点があるとして、県の業務を委託することも検討するという。【出典:毎日新聞】
行政の支援も必要だし、そのことで可能性が広がっていく。全国的にも広がって行くであろう
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