生活保護、なお窓口が壁 付き添いあれば変わる対応
昨年来の景気の悪化で、生活保護の申請が急増している。しかし、申請窓口では担当職員が本人の働く意欲や親族による扶養を盾に門前払いにする「水際作戦」が根強く残っている。厚生労働省は昨年春、窓口でのこうした対応を是正するよう保護の実施要領で通知したが、浸透していない。
「ホームレスになってほかの区役所に行くか、両親のところに行って」。名古屋市の元タクシー運転手の男性(48)は昨年12月中旬、地元の区役所で職員にそう告げられた。生活保護を申請しようとしたが、窓口では現役世代であることや体の不調を証明する診断書がないことを指摘された。申請を断念せざるをえなかった。男性は06年5月、乗務中に衝突事故に遭ってから、首や右足、腰に痛みとしびれがある。歩くのにも一苦労だ。事故後、病院には行ったが、診断書はもらわなかった。仕事を続けるうちに症状は悪化し、「とっさにブレーキが踏めないようでは乗務は無理」と07年末に退職した。
同居していた両親は無年金。80代の父は警備員、70代の母は清掃員をしていたが、08年4月から月3万数千円の家賃が払えなくなった。国民健康保険料は払えず、病院にも通えない。体の痛みがひどく、仕事探しも断念した。
同年12月、両親は別居して別のアパートに移った。働ける現役世代とみなされる自分と同居していては、両親が生活保護を受けられない恐れがあったからだ。1人残ったが、同月中旬には部屋の立ち退きを通告された。
今年1月、部屋の立ち退きを迫った家主の代理人に生活保護申請にかかわる相談に乗っている「東海生活保護利用支援ネットワーク」があると教わった。さっそく相談し、同ネットワークに参加する司法書士に同行してもらい、同じ区役所に出かけた。すると、生活保護申請はすぐにでき、1月下旬に保護開始決定の通知を受け取った。生活再建の道が開けた。
男性は「1人で行ったときの窓口の対応は何だったのか」と話す。
元派遣社員の男性(38)は今年1月、埼玉県と東京都内の窓口計3カ所で、申請を断られた。「住民票がないとだめ」などと言われ、断られたという。自立支援センターの寮に入ることも勧められたが、抽選に漏れた。
住民票がなくても、「現在いるところ」の自治体には、保護申請に対応する義務がある。男性は、「あまりにもひどい」と自立生活をサポートするNPOに駆け込み、その足でスタッフと窓口を再訪し、申請書を受理された。
司法書士で、同ネットワーク副代表の水谷英二さんは「弁護士や司法書士が同行した場合、ほとんどの申請が受理されている」と話す。同ネットワークがこの1年間に受けた相談は310件。うち150件は同行支援の依頼だった。「国や自治体は水際作戦は減ったというが、申請書すらもらえないこともある」と指摘する。
日本弁護士連合会が昨年夏に実施した電話相談でも、生活保護を受けられなかったという62件の内容を分析したところ、32件は窓口での対応が違法、もしくは違法の疑いが強かったという。
名古屋市保護課は「(水際作戦は)あってはならない対応。これまでも丁寧に対応するよう指導しているが、さらに徹底する」としている。 【出典:朝日新聞】
財政規律の強化で始まった窓口規制。本来はあってはならないこと。それよりも、資産調査など、社会福祉の専門的な知識を持った専門調査官やそのシステム作りをしていく必要がある
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