言葉の遅れ
上 気持ち、表現してあげて
◇発達には個人差 無理に教えこまず
「2歳なのにまだ『マンマ』しか話しません。育て方が悪いのでしょうか」??。「子ども相談室」(毎週日曜くらしナビ面掲載)には言葉の悩みがたくさん寄せられる。言葉の力を伸ばすにはどうしたらよいのだろうか。
「ロケットがバーンと宇宙に飛び出すぞお!」。画用紙に描いた絵を見せながら元気に話す優介君(6)=仮名=は、1歳半の時まだ言葉が出ず、健診で遅れを指摘された。発達障害などが専門のとちぎリハビリテーションセンターの小児科医、小黒範子さんによると、子どもの多くは1歳半で2?5単語、2歳で「ママ、来て」などの2語文、3歳で2?3単語を使って簡単な会話ができ、名前を話す??という経過をたどる。2歳までに単語が出ない、3歳で2語文を話さないと遅れも考えられる。
東京都では、06年度の3歳児健診受診者8万9027人のうち、言語については2827人(3・2%)が、経過観察等が必要な「要所見」とされた。
ただ、個人差が大きい。言語聴覚士の中川信子さん(60)は「10カ月で話す早い子もいれば、2歳半でも数語しか話さない子もいる」と話す。また「日本語の50音が発音できるようになる大まかな目安は4歳半くらい」なのだという。
■難聴などの可能性
言葉の発達が遅い場合は、知的な遅れや発達障害、聴覚障害なども考えられる。難聴は早く見つけて適切な指導を受けることが望まれ、新生児聴覚検査も実施されている。
個人差や発達障害、知的障害は見極めが難しく、経過を見ていくしかない。健診で「様子を見ましょう」と言われることがあるのはこのためだ。「様子を見る」と言われても、「自分の育て方のせいではないか」と悩む保護者も少なくない。
中川さんは「子どもも自分も責めないで。無理に教えこもうとしないで」と言う。熱心に言葉を言わせようとすると、子どもは苦痛に感じる。
家庭でできることは何か。中川さんは「言葉は親子が気持ちを共有することで育つ」という。具体的には(1)子どもの発する音や声をまねてみる(2)子どもの関心に合わせて語りかける(3)おいしそうに食べていたら「おいしいね」などと、子どもの気持ちを口に出してあげる??ことを勧める。
■専門家の教室
専門家による言葉の教室も参考になる。西東京市の小児科医、梅村浄(きよら)さん(63)の診療所では、言葉の遅れがある子のため、月2回、2時間の「遊びの会」を開く。2?3歳の5人前後が、リズム遊びや絵本の読み聞かせを楽しむ。言語聴覚士や音楽療法士、保育士らが、体や声をフルに使い、関心を引き付ける。「これ、なあに」と語りかけ、表情やしぐさから言いたいことをつかみ取る。反応が少ない男の子に、メロディーに乗せて「大好きだよー」と歌いながら顔を近づけると、笑みがこぼれた。
優介君も教室に来ていた。3歳の時、広汎性発達障害と診断された。4歳半まで「ママ」「ワンワン」などの単語しか出なかったが、ある日、保育園で「ケーキ、ちょうだい」と2語文を話した。言葉の数は増え、「今では年齢と同じ6歳相当の力がある」と両親は語る。母親は「遊びの会は、言葉が出ようとする芽を的確に見つけ、促してくれた。家庭での接し方の参考にもなった」と話す。
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◇気になったら相談を気になる時はまず、地域の保健センターか保健所へ。アドバイスを受けたり、言葉の発達を支援する各地のサポート機関などを紹介してもらえる。また、親の会としてNPO法人全国ことばを育む親の会、NPO法人ことのはサポート
下 幼稚園と家庭が協力
◇障害の有無より、早めのサポート 子どもの特徴つかみ、情報共有して
言葉の遅れを指摘された子どもには、どういう教育が適切なのだろうか。幼稚園など教育現場と家庭が協力することで、最適なサポートのあり方が見えてくるようだ。
■集団生活も可能
「ちょっと社会性に欠けています」。東京都内の女性は、長男(5)を入園させるため、事前に訪れた幼稚園からこう指摘された。1歳半で意味がある単語が出ず、言葉が遅れているとは気付いていた。「『あ、い、う』って言ってごらん」と何度も話しかけてきた。幼稚園の指摘を受け、「集団生活をやっていけるのだろうか」と不安になった。しかし、教諭が「この子のペースに合わせて一緒にやっていきましょう」と言ってくれたことで気持ちは少し落ち着いた。
子どもの言語障害に詳しい国立特別支援教育総合研究所の久保山茂樹主任研究員(43)は「言葉の遅れの多くは、言葉だけの問題ではなく、コミュニケーションの力と関連している」と分析している。このため、言葉を教え込むより、子どもに合わせたコミュニケーション力のサポートが重要になる。たとえば「あと3回でおしまい」などと、行動の見通しを伝えればスムーズに聞ける子どもがいる。また、先生がみんなに指示すればBGMのようにしか感じられなくても、目の前で語りかけられると理解できる子どももいる。「適切なサポートがあれば、十分集団生活をしていける子どもが多い」と久保山さんは話す。
■個別に指導
東京都八王子市の柚木武蔵野幼稚園は昨年、個々の子どもに対応できるようにと、専用室「プレイルーム」(28平方メートル)を作った。支援が必要と思われる子どもが、保護者の合意の上で利用している。子どもは一般クラスに在籍し、状態に合わせて入れ替わりやってくる。一般クラスが読み聞かせをしている時間に、同じ絵本を教諭がゆっくりと読んであげることもある。保護者と幼稚園は連絡ノートで情報を交換し、子どもの思いを満たす方法を学んでいく。こうすることで、一般クラスの保育と徐々につなげていくのだ。
乳幼児の発達上の問題は、障害などの特定が難しい。このため、「障害児ではないから」と、個別指導や支援教室に抵抗を感じる保護者もいる。しかし、久保山さんは「障害の有無を確定するよりも、できるだけ早く支援することが大切だ」と指摘する。専門家の力も借りながら子どもの特徴を早めに見つけ、幼稚園・保育園と家庭が情報を共有すれば適切な支援ができるからだ。同研究所は06?07年に言葉の指導教室などに通う子どもの調査をした。それによると、担当者が発達障害の傾向を指摘した幼児899人のうち、半数以上の485人には診断名がなく、「障害」がはっきりしなくても通所する子どもは多いことが分かった。
情報共有の取り組みは自治体でも始まっている。松江市教育委員会は04年、発達にかかわる情報を管理するための「サポートファイルだんだん」を全国に先がけて作った。子どものプロフィル、家庭での様子、どのような診断や指導を受けてきたかを書き込む。進学・進級して先生が変わっても、積み上げた情報を引き継げる。現在は、発達相談などを受けた子どもの保護者に渡しているが、心理的な抵抗がないよう母子手帳のように子ども全員に配ることも検討している。【出典:毎日新聞】
このような取り組みが、もっと、もっと広がってほしい
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