知的障害受刑者の自立 東北の受け皿作り進む
軽微な犯罪を繰り返す知的障害者の再犯防止と生活支援を目指した国の事業が新年度、スタートする。刑期を終えても生活に困窮して万引や無銭飲食に手を染めてしまう障害者を、社会福祉の視点で援助する試みだ。東北でも福祉、法務の関係機関が手を携え、出所後の障害者を支える取り組みが始まろうとしている。
「福祉と法務のはざまに落ちた人がたくさんいた。刑務官や保護司の方々に大変苦労を掛けていたことを、福祉サイドは知らなかった」仙台市青葉区で先日あった障害者の再犯防止を話し合うシンポジウム。長崎県の社会福祉法人南高愛隣会理事長で元宮城県社会福祉協議会副会長の田島良昭氏が、出席した保護司ら約200人に深々と頭を下げた。田島氏は現在、厚生労働省の「罪を犯した障がい者の地域生活支援に関する研究班」の主任研究者だ。
法務省矯正統計年報によると、2006年度の新規受刑者3万3032人のうち知的障害が疑われる受刑者(知能指数69以下)は7563人で、実に22.8%に上る。
知的障害のある受刑者410人を対象とした研究班のサンプル調査では、罪名の43.4%が窃盗罪だった。動機は生活苦が36.8%を占め、80.7%が犯罪時に無職だった。
さらに69.5%が再犯者で、前回の出所後も43.5%が親類宅、福祉施設など身を寄せる場所がなかった。
田島氏は「支援者がいない障害者が食事や住まいを刑務所に求め、わざと犯罪に手を染めていた実態が相当ある」と研究を総括する。
新年度から始まる事業で、各都道府県はコーディネート役の「地域生活定着支援センター」(仮称)を設置する。センターは、刑務所や保護観察所と連携して障害のある受刑者の出所後の受け入れ先や必要な福祉サービスを調整する。
政府は新年度予算案にセンター設置関連費6億1000万円を盛り込んだ。センターは、都道府県か社会福祉法人、NPOによる運営を想定。出所者を受け入れた事業所には、報酬が加算される。
障害者の出所情報など法務機関との連携が乏しかった東北の福祉機関には、「ケアが必要な人を十分に手助けできない」との思いを抱き続けてきた関係者も少なくない。
支援センターの運営に前向きな岩手県社会福祉事業団は「職員の資質向上は必要だが、障害者サポートの社会的役割がわれわれにはある」と積極的。山形県社会福祉事業団も「地域社会の受け皿づくりが必要になるが、興味は十分ある」と意欲を示す。
受刑者の処遇行政に長年携わってきた東北地方更生保護委員会の山田憲児委員長は「刑務所だけでは、障害者の再犯問題は解決しない。福祉機関やNPOと連携し、障害者が繰り返し刑務所に入る社会を改めていきたい」と事業展開に期待を込める。【出典:河北新報】
触法障害者の支援は、まだ始まったばかり。今後の展開に注視したい
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