’08いばらき記者ノート:老老介護殺人事件 /茨城
◇届かなかった「救いの手」
2月下旬の深夜、筑西市の農家で、寝たきりの夫(当時77歳)に懇願された妻(78)が包丁で首を刺した。妻も一緒に死のうとしたが、一命を取り留めた。事件から10カ月。近所に住む親類の男性(71)は悲劇のサインに気付かなかったことに悩み、今も「なぜ」とつぶやく。
男性によると、夫は農家の長男で社交的な性格の人だった。10年前に腰を痛めるまで、夫婦で手を携えて集落のカラオケ会に参加していたのを覚えている。07年に夫が寝たきりになった後も、妻は介護の間を縫って、月3回の会合に顔を出した。悩むそぶりを周囲に見せなかった。
嘱託殺人罪に問われた妻の公判では、夫婦がぎりぎりの生活を送っていた実態が明らかになった。月〜土に訪問のデイサービスを受けていたが、深夜のおむつ交換などほとんどの介護を妻が1人で担っていた。年金と、同居の長男の数万円の補助で生活していたが、国民健康保険を1年間滞納し、電気代すら払えなかった。
「痛くなるばかりだから殺してくれよ」。そう言われた妻は「私がやらなければほかにはいない」と包丁を取った。生き残った妻は「死ねなかった。ごめんね父ちゃん。これからの人生、夫がくれたものとして生きたい」。法廷で、かすれる声でつぶやいた。
親類の男性は悔やむ。「できるだけ人様の世話にならないという農村の古いしきたりがあった。(苦悩が)たまっていったのか。こうなる前に役に立てなかったか」。筑西市介護保険課にも、今年、夫婦が異変を訴えた記録はない。担当者は「どうすれば防げたのか」と頭を抱える。
NPO法人「県ケアマネジャー協会」の能本守康さん(44)は、第三者の助言があれば、防げたと考える。事情を話せば健康保険料の猶予や生活保護につながる可能性もあったからだ。しかし、介護の現場では、多くの高齢者がいまだに「福祉」という言葉に戦後の貧困対策を連想し、拒否感を抱いていることを感じるという。「気軽に近くのケアマネジャーや行政に相談してほしい」と力を込める。一方で「地域で誰かが見つけて手を差し伸べるシステムがないと、事件は繰り返される」。
妻は執行猶予付きの判決を受け、老人ホームで暮らしているという。【出典:毎日新聞】
より地方の方が深刻さを増している老老介護。なんとかしたいし、何とか出来なければ、あまりにも切ない
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