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認知症独居 社協が預貯金を出し入れ 信頼関係の構築が不可欠

日用品を買うにも、介護保険サービスを利用するにも、お金は必要。年金などを銀行から引き出し、支払いに充てなければなりません。しかし、お金の管理が困難な独居や認知症高齢者が増加し、どう支えるかが課題に。暮らしに必要なお金の管理を、社会福祉協議会(社協)が1回平均1200円程度で手伝う「日常生活自立支援事業」の利用者が増えています。

判断に不安を感じたら… お金の管理どうする?

 東海地方に住む田中靖子さん(77)=仮名=は要介護2。認知症のため、計算したり、メモを取ったりが難しくなった。

 家計管理も上手くいかず、テレビショッピングで不必要なものを買っては、人にあげようとする。タクシー代を払うとき、運転手にキャッシュカードを渡し、「暗証番号は○○○○だからね」と伝え、引き出しを頼もうとしたこともある。独身の田中さんには、生活費を管理してくれる家族もいない。年金が振り込まれると、後先を考えずに使ってしまう。

 そんな田中さんを案じた担当ケアマネジャーが社協に相談した結果、田中さんは昨春、社協と契約。手配された「生活支援員」に銀行預金の出し入れなどを手伝ってもらうようになった。

 このサービスは「日常生活自立支援事業」と呼ばれる。判断力が十分でない認知症高齢者らを対象に、社協が日ごろ使うお金の管理などをサポートする。しかし、田中さんは「証書の順番が変わっている。留守中に生活支援員が家主に頼んで入って、勝手に見たに違いない」などと腹を立て、すぐに解約してしまった。年をとって猜疑(さいぎ)心が強くなり、生活支援員を信用できなかったようだ。

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 家計の事情は、他人に知られたくないもの。サービスを続けるには信頼関係の構築が不可欠だ。認知症高齢者を支援するには、対応に配慮も必要だから難しい。

 東京都立川市の社協「地域あんしんセンターたちかわ」では、「日常生活自立支援事業」を行う際、“お試し期間”を設ける。相談から契約までに2〜3カ月かけ、悪徳商法による被害などの緊急性がなければ、職員が何度も訪問し、契約内容を説明する。実際に金融機関に同行して、サービスの理解を深めてもらう場合もある。

 サービスを開始してからも、本人の目の届かない所では、お金を動かさない。寝たきりなど、要介護度の重い人以外は、必ず本人といっしょに金融機関に行き、払い出し票も本人が記載する。代行するより時間はかかるが、トラブルは防げる。

 お金に対する本人の意識も高まり、「お釣りはいくら?」と細かく聞くようになるなど、金銭感覚を取り戻す効果も期待できる。80歳代の利用者で、認知症状が改善されたケースもあるという。

 立川市社協の比留間敏郎さんは「金銭管理をして、とりあえず安全な生活をしてもらうというのではなく、自分の生活を築いていく意識を持ってもらいたい」と話す。

 この事業の対象範囲を超える課題について、同市社協は市や地域包括支援センターなど、関係機関と緊密に情報交換し、ほかのサービスにつなげている。例えば、洋服の購入費用を下ろしても、ひとりで買い物できない人には、有償ヘルパーやボランティアを手配する。それも難しければ、金融機関の帰りにデパート内を通り、買い物気分を味わってもらうこともあるという。

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 「日常生活自立支援事業」は国の補助事業。利用者数は年々、増加傾向だ。実施主体は都道府県や政令指定都市の社協だが、委託先も含めると、全国約650カ所の拠点となる社協で行われている。

 立川市社協はこの拠点となっているが、拠点が隣接市などの社協という市町村もある。

 富山県氷見市は隣接市の社協が同事業をカバーするが、氷見市社協では、似た形の「日常生活金銭管理サービス」を早くから独自事業として実施していた。サービス内容は、日常生活に必要な現金と通帳の保管。必要に応じて支払いなどを代行する。所得の低い人も利用しやすいよう、利用料は無料だ。

 同社協はケアプラン作成や訪問介護なども行っており、住民にとっては身近な存在。それだけに、信頼度も高い。中尾晶美事務局長は「都会と違い、社協の看板は大きい」と地域性を語る。

 独自サービスを始めたのは、10年前に中尾さんが預金8000万円をもつ高齢者から貴重品バッグを預かったのがきっかけ。この高齢者は常に、財産を持ち去られる不安があり、入院時に認知症状が出て暴れても、枕元からバッグを離さなかった。中尾さんを信頼し「預かって」と頼むので、中尾さんが粘着テープで閉じ、社協の金庫に保管した。この高齢者は安心したのか、暴れなくなったという。

 金銭管理のニーズがあると分かり、組織としてサービスを整備。その後、国の日常生活自立支援事業が始まっても、「見ず知らずの人に預けたくない」という高齢者の気持ちをくんで継続している。

 平野隆之・日本福祉大学教授は「家計管理は長らく私的な領域と考えられていた。福祉の支援で最も遅れた部分が金銭管理。高齢者の生活を支えるには、この部分の援助が必要だ」と指摘する。

 そのうえで、「日常生活自立支援事業は広域の仕組みで、市町村単位の身近なサービスになっていない。日常的なお金の出し入れなどの支援は、身近にかかわる社協などの機関が組織的に行うべきだ」と話している。
【出典:産経新聞】

金融機関が代行業務はできないものか

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