超高齢社会に備える:シリーズ2 きょう「介護の日」
◇グループリビング、宅老所??自立支え、心地よく
今年から、きょう11月11日は「いい日、いい日」にかけて「介護の日」。介護への理解と認識を深める日だ。超少子高齢社会を迎え、どこで誰の介護を受けて老後を送るかは大きな関心事だが、できるだけ自立した生活を送りたいもの。「自立した老後」を支える二つの施設を訪ね、考えてみた。
「日本人の老後は行政や家族任せ。以前から本人の選択権や人間の尊厳が損なわれていると感じていた」NPO法人「COCO湘南」(神奈川県藤沢市)の理事長、西條節子さん(80)は、県内3カ所にグループリビングを設立したきっかけを説明する。西條さんは元藤沢市議。海外視察で福祉先進国を訪れ、高齢者の自立した暮らしぶりに驚いた。
グループリビングは、気の合った仲間や健康に不安のある人が集まる暮らし方を指す。特徴は▽民間が自主的に建設し賃貸形式が多い▽施設でなく、個々の部屋はプライバシーがあり、食堂など共有空間がある▽入居者が運営にかかわり、地域住民と交流がある??などだ。
西條さんらは建築家や看護師など専門家16人で作った研究会の意見を聞きながら、99年4月、最初のグループリビング「COCO湘南台」(同市)をオープン。西條さんをはじめ、74?97歳の独身者10人が暮らす。
広さ25平方メートルの個室は、トイレとミニキッチン、洗面所を備える。食事は朝食が自由で、昼・夕食は外部に委託。食事の後片づけやゴミ出しなどは当番制で、門限はない。
COCO湘南台の場合、入居一時金は370万円で、家賃や食事代、共益費などの生活費は月計13万7000円。各室の光熱費は個人負担だ。
高坂嘉代子さん(78)は「1人暮らしの時は夜が不安だったが、ここは安眠できる。みんなで足りないところを補い生活している」と満足そう。高橋郁子さん(74)は「他人の生活に入り込まず、暗黙で互いに適度な距離を保っており人間関係も良好」と言い、臼井喜美枝さん(78)は「ここが終(つい)のすみかと思っている。初めての共同生活は不安だったが、各自が自立しているので居心地がいい」と話す。
生活の3原則は▽火を出さない▽干渉しない▽月1回、ミーティングを開く。評判が口コミで広がり、視察や問い合わせが絶えず、現在、入居は10人待ちの状態だ。西條さんは「個性や生き方を受け止め、個人を尊重し合うのがうまく生活する秘訣(ひけつ)」と話している。
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水曜日の午前10時。愛知県高浜市の宅老所「じぃ&ばぁ」の玄関先には、施設を利用するお年寄りたちの手押し車やつえがずらりと並んだ。この日の利用者は20人。午後4時までの約6時間、昼食をはさみ歌や世間話を楽しんだ。
利用者の一人、石川房江さん(90)は「自宅で一人で食事をしても味気ないけど、大勢で食べると食欲が出る」とうれしそうだ。
宅老所は、介護保険サービスが受けられない65歳以上の自立高齢者に、簡単なデイサービスを行う施設。介護保険制度の施行前年の99年、市が「サービスが受けられない高齢者が利用できる施設を作り、閉じこもり防止に役立てよう」と開設した。9年間にわたる息の長い活動が評価され、00年に制定され今年9回目を迎える毎日介護賞のアフラック賞を今年受賞した。指定管理者は市社会福祉協議会で、空き店舗や福祉施設など5カ所を改修して設置したが、活動の主体は市内33のボランティアグループ。メンバー計360人の大半が50?60代の主婦で、当番制で活動している。
5宅老所とも施設利用料は200円だが、手作りの昼食は施設ごとにメニューが異なり、食事代も100?300円とばらばら。「じぃ&ばぁ」は200円で、この日はマメダイをはじめ、おから、サトイモと厚揚げの煮物、白菜のからしあえなど7皿に加え、デザートとコーヒーが並んだ。
市内のケアハウスから月1回訪れる宮崎直(すなお)さん(78)は「家庭的な料理が楽しみ。久しぶりにおからを食べました」と感激した様子。吉澤美紗枝さん(73)も「この豪華さとおいしさで200円は安い」と喜ぶ。
「食材の大半は近くの農家が好意で提供してくれるのでとても助かる。利用者の『おいしい』が何よりの励み」。こう話すのは、当番のボランティアグループ「たんぽぽ」のリーダー、佐久間啓子さん(59)。元喫茶店マスターの神谷稔さん(85)は「義務感でなく、ボランティアを楽しんでいることが長続きのコツ」と言う。
市社会福祉協議会の高木良彦主事は「ボランティアは特別なことをしていないように思われがちだが、昼食とおしゃべりは最高のボランティア。利用者本位に考えた運営だからこそ長く続いた」と話す。
また、同市福祉部介護保険グループの木村忠好主幹は「宅老所のボランティア活動が市の地域福祉の原点となり、地域でできることは地域で取り組むという風潮が定着した」と見ている。
◇終のすみかの選び方、元気なうちに確かめて特別養護老人ホームやグループリビングなど、終のすみかの選択肢は幅広く、自分に合った「居場所」を選ぶのはなかなか難しい。
「元気なうちに実際に施設を訪れ、自分の身の丈に合った施設の職員や入居者の雰囲気を確かめて」。こうアドバイスするのは、現役ヘルパーで「あなたは『ひとり』で最期まで生きられますか?」(講談社)の著者、栗原道子さん。NPO法人「シニア住まい塾」の相談員として、住まいに関するさまざまな相談にも応じている。
「いざ入居が必要な時は体が不自由で、第三者が見つけた施設に入らざるを得ない場合も多い。健康時にさまざまな要介護度を想定し、入居施設の目星をある程度つけておくことが大事」と栗原さん。
まず、自治体の高齢福祉課や地域包括支援センターなどで、公立や民間の施設リストを入手し、数施設に電話で様子を聞いたり、資料を送ってもらう。この時、入居費や償却方法などを書いた「重要事項説明書」ももらう。気になった施設があったら直接訪問。予約すれば昼食を入居者と取ったり、体験入居できる施設もあるので聞いてみるといい。インターネットなど民間の相談窓口も増えているが、特定の有料老人ホームがスポンサーで情報が偏っていることもあるという。栗原さんは「会員制の団体は比較的公平。入居金の支払い方法など、個別状況に合わせて交渉を代行してくれる場合もある」と話す。
また、健康な時は部屋の広さや設備の充実度、交通の便などに目が行きがちだが、要介護度が重くなると室内にいることが増え、壁や家具などにつかまって歩くため狭くても不自由しない。こうした体の変化を考慮に入れることも大切だ。【出典:毎日新聞】
今年からの介護の日。誰もがいい介護が受けられる、それが許される社会、国になってほしい
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