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高専賃を知る

高専賃を知る:/上 サービス、事業者任せ

老後は自宅、施設、それとも住み替え???。特別養護老人ホームなど施設への入所が数年待機は当たり前という中、「高専賃(こうせんちん)」という言葉をよく耳にするようになった。「高齢者専用賃貸住宅」の略語で、有料老人ホームほど入居時にかかる費用が多くないのが売りの一つ。見守りサービスなど「安心」をPRするところも増えている。だが、質は玉石混交。3回に分け、高専賃選びのポイントを紹介する。

 ◇行政の関与少なく、爆発的に増加

 「24時間体制の医療・介護」「3食付き、生活支援サービスあり」

 東日本で間もなくオープンする高専賃のうたい文句だ。医療法人が病院の敷地内に4階建ての建物を建設。通所介護事業所や訪問介護事業所も併設する。

 都市部ではないが月の負担は家賃、食事代、共益費、生活支援サービスで約15万円。入居時にかかる費用は民間マンションに入るのと同様に家賃3カ月分ですむが、医療・介護保険を利用すれば、別途自己負担がある。

 ただ、サービスの質は経営状況で変わる可能性がある。たとえば、夜勤職員は各階に配置する予定だが、運営を任される30代の男性は「コスト次第」と打ち明ける。男性はさらに「重度の高齢者を集めないと採算はとれない」と話す。

 高齢者住宅は01年に「高齢者の居住の安定確保に関する法律」が施行された当初は、高齢を理由に入居を拒まない「高齢者円滑入居賃貸住宅」と、所得に応じて家賃補助がある「高齢者向け優良賃貸住宅」の2種類だった。05年12月から、高齢者を専ら借り主とする高専賃が加わった。

 その情報は国土交通省所管の高齢者住宅財団のホームページに掲載されているが、登録は義務ではない。それでも登録は2万戸を超え、爆発的な伸び。

 特養やグループホームが総量規制を受け、建設が抑制気味になっていることもあるが、条件が「高齢者の入居を拒まない」ぐらいしかないのも大きな魅力で、不動産業者などの新規参入が相次ぐ。

 条件が緩いということは裏を返せば、建物以外の介護や見守りなどあらゆるソフト(サービス)は事業者の考え次第ということ。施設のような職員の配置基準もない。バリアフリーでなく食事も提供しない高専賃から、有料老人ホーム並みの介護サービスを提供するものまでさまざま。

 とにかく、入居者が内容に不満を抱いても、行政がきめ細かく指導してくれるわけではないことを肝に銘じる必要がある。

 こうした高専賃への行政の関与の少なさに対し、総務省は今月、「介護保険事業等に関する行政評価・監視」の報告書で、「今後、入居者等の保護の面から問題が発生しうる」と指摘した。

 ◇選ぶ際は「詳細情報」参考に、複数見学して

 では、どう選ぶか。参考になるのが、高齢者住宅財団のホームページに登録されている「高専賃詳細情報」。受付窓口は書類審査だけなので、実態と異なることもあるが、考える手がかりにはなる。都道府県の指定登録機関でも閲覧できる。

 登録されている情報は、高専賃の概要▽構造・設備▽介護サービスなどの提供の有無??といったところ。

 要チェックは費用面。月々の費用で「家賃および共益費の概算額」は明示が義務づけられている。それ以外は義務付けはなく、賃貸契約とは別に契約を結び、サービス料名目で月数万から数十万円徴収するケースもあるが、詳細情報では分からないこともある。

 「前払い家賃」は原則保護されるがそれ以外は返還されない恐れもある。施設利用料、入居金などの名目で1000万円以上払うケースもあり、「敷金以外のその他一時金」に含まれているかは確認が必要だ。

 「食事」「入浴、排せつまたは食事介護」に「○」が付いていても実際には提供されず、入居者が個別に契約するケースもある。

 建物は基準上、必ずしもバリアフリーでなくてもいい。3階以上の建物でエレベーターがないことがある。「浴室」は「○」が付いていてもシャワーだけのこともある。

 高齢者住宅情報センターの小堀秀子室長は高専賃選びのポイントとして、(1)入居時に元気でも介護サービスは必要になるという前提で聞く(2)夜間のスタッフ体制(3)最期まで住めるかの確認??などを挙げる。実際には、最期まで暮らせる高専賃はまだ少なく、事業者が有料ホームやグループホームなど、移ることが可能な他の施設を持っているかなども確認すべきだという。

 小堀さんは「体験入居も含め最低3カ所は見てほしい」とアドバイスする。

高専賃を知る:/中 要介護、安住の地遠く 段差だらけの建物、少ない職員

札幌市の定山渓温泉にある「かっぱの家」

 札幌の奥座敷といわれる定山渓温泉(札幌市南区)。ホテルや旅館などが点在する中に、企業の保養所を借り受けた高齢者専用賃貸住宅「かっぱの家(おうち)」がある。50?90代までの10人前後が暮らし、平均要介護度は3弱。建物は借り物のため改修できず、中は段差だらけ。エレベーターもないのに2階に暮らす車いすの高齢者もいる。

 「かっぱ」が知られるようになったのは、札幌市など3カ所で高齢者住宅を運営していた会社が5月末に経営破綻(はたん)し、行き場を失った高齢者の受け皿の一つになったからだ。破綻した高齢者住宅の事務長が「かっぱ」の社長という関係だった。

 高齢者住宅から「かっぱ」に、7人の高齢者が移った。だが、職員10人が8月、賃金未払いに嫌気がさして退職。併設の通所介護事業所などは閉じざるを得なかった。

 その後は社長以下7人で日中は3人、夜勤は1人体制で高齢者の入浴から食事、病院への付き添いをこなす。介護保険は使わず、月11万5000円ですべてを賄う。社長は「だれか運営してくれる人がいたら譲りたい」と話し、高齢者の安住の地とは程遠い。

    *

 しかし、行政の対応は後手に回った。北海道庁は「住居部分について指導権限はない。有料老人ホームなら別だが……」(保健福祉部)と腰が重かった。

 高専賃とは基本的に、専ら高齢者を借り主とするアパートのイメージ。所管は国土交通省で、登録も義務ではなく行政の関与は薄い。有料ホーム(厚生労働省所管)であればさまざまな基準があるが、高専賃の場合、介護サービスをどれだけ提供するかは事業者次第で、道庁も手を出しにくいというわけだ。

 ただ、北海道庁の説明をうのみにはできない。06年の老人福祉法改正で有料ホームの人数の要件がなくなり、食事、介護サービス、家事援助などいずれかを提供する場合は原則、有料ホーム(住宅型)にあたると判断され、届け出が必要になったからだ。

 ところが、道は「06年の改正時に通知を出した。すべて把握するのは不可能」と動かなかった。9月中旬にようやく、道内の実態調査に乗り出したと思ったら、「かっぱ」については「障害者も入居させており、将来的にも入居させると事業者から聞いている」として「有料ホームにはあたらない」との判断を下し、積極的な関与を避けた。

 千葉県では、浦安市で起きた無届け有料ホームでの虐待事件を受け、高齢者以外が入居していても有料ホームとして届け出を求め、行政の関与を強化しているのと対照的。高齢者不在の対応の印象は否めない。

 ◇有料ホームは行政に指導権限

 介護が必要になった場合を想定し、高専賃と介護付き有料老人ホームの主な違いをまとめた。

 大きな違いの一つが行政の関与。介護付き有料ホームになるには「入居者3人に職員1人以上」などの条件を満たし、「特定施設入居者生活介護」の指定を受ける必要がある。届け出チェックも入念で、年1回状況報告を求められ、行政が監査に入る権限もある。これに対し、高専賃は登録も、書類審査にとどまる。

 契約形態が「賃貸借」か「利用権」か、という点も大きな違いの一つ。事業者が倒産した場合は高専賃の方が権利としては強く、居住権が確保される。

 介護費用も違ってくる。介護付き有料ホームは費用負担に上限があるが、高専賃は1対1の訪問介護などを時間単位で受けるため、重度になると自己負担額が増える。見守りも不十分で、住み替える必要が出てくる恐れもある。

 なお、少々複雑になるが、高専賃と有料ホームの間に、厚労省所管の「適合高専賃」という区分けもある。高専賃のうち、部屋の広さが25平方メートル以上で、食事、介護の提供など一定の条件を満たした場合にあてはまる。

 06年の介護保険法改正でできた。適合高専賃なら、有料ホームとして届け出る必要はなく、行政の干渉を受けないですむ。ただ、届け出は義務ではなく、怠っているケースも少なくない。

 有料ホームのコンサルティング会社「タムラプランニング&オペレーティング」の田村明孝社長は「有料ホームとほぼ同じサービスを提供しながら、チェックなどのハードルが大きく違っていいはずはない。質の保証のためにも行政が関与すべきだ」と指摘する。
 ◇高専賃

 高齢者居住安定確保法の施行(01年)に伴い創設された高齢者円滑入居賃貸住宅(高齢者の入居を拒まない住宅)のうち、専ら高齢者に賃貸する住宅のこと。05年12月に導入された。都道府県に登録済みの住宅を指すが、公的助成制度などはない。登録していない高齢者住宅は「老人下宿」「高齢者マンション」などと呼ばれる。

高専賃を知る:/下 「安心」の費用さまざま サービスの選び方次第

 「好き勝手に暮らせるし、孤独でもない。息子は安心して仕事ができると言っています」

 神奈川県平塚市四之宮にある高齢者専用賃貸住宅(高専賃)「ユーミーメディカルタウン湘南四之宮」(5階建て)の自立型居室で暮らす長田晴美さん(72)は目を細めた。JR平塚駅から車で10分の住宅街にオープンしたのは昨年10月。糖尿病の持病に加え、腰痛で歩くのが困難な長田さんはケアマネジャーから話を聞き、今年4月に入居した。要支援2。ここで訪問介護を受けて暮らしている。

 部屋は5階で、広さ31・5平方メートル。ナースコールがつき緊急時にはいつでも対応してもらえる。掃除などで出入りするヘルパーのほか、施設長の高井美砂子さんもしばしば顔を出すため、安心だという。

 1階はクリニックが入り、2?3階はおおむね要介護者向け、3階には認知症の高齢者も入居している。4?5階は自立型で、全部で44戸。要介護向けと、自立型に分かれて住む夫婦もいるという。心身の状態の変化に応じて部屋を移ることも可能だ。近くの診療所とも連携しており、医師の訪問診療を受けたがん患者2人をすでに看(み)取(と)っている。

 「高齢者には施設か自宅かの二者択一でなく、限りなく自宅に近い雰囲気で、しかも虚弱、要介護など身体の状態変化に対応できる受け皿が必要だ」。「ユーミー」の設立にかかわった高齢者住宅の運営支援会社「エヌ・ビー・ラボ」の清原晃社長は話す。

 「ユーミー」入居には、家賃のほか管理費(共益費含む)が6万?12万円かかる。ここに24時間体制での見守りや緊急時に対応するための人件費、生活全般の相談費用が含まれる。

 長田さんの場合、入居金は105万円。家賃8万8000円▽管理費6万円▽食費6万3000円のほか介護保険の自己負担が月4000?5000円かかる。費用は月21万円超と高めだが、年金と長男の支援でまかなっている。

    *

 川崎市多摩区布田の市営住宅の一角に「上布田つどいの家」はある。オープンは昨年3月。1階では定員9人のグループホームのほか、定員25人で「通い」「泊まり」「訪問介護」を組み合わせた小規模多機能型居宅介護サービスを提供している。2、3階は賃貸住宅18戸。うち6戸が高専賃だ。小規模多機能型居宅介護は、06年の介護保険法改正で、自宅や身近な地域で暮らしたいという高齢者の希望に応えるため導入された。「つどいの家」のプランは各地で住宅型有料ホームを展開する「生活科学運営」が川崎市住宅供給公社の公募で提案した。

 賃貸住宅の入居者で現在、1階のサービスを利用しているのは4人。ある女性(79)は、昨年6月に夫を亡くして以来、息子夫婦に頻繁に電話をかけるなど精神的に不安定な状態が続いた。「1人にはしておけない」と息子夫婦が説得し、千葉県から息子の家に近い「つどいの家」に入居させた。有料老人ホームも検討したが、家事は自力でできるため、台所付きの住まいを選択した。女性はいまでは週3?4回、1階に通い、近所のスーパーで買い物をしながら自炊を続けている。1階は夜間も含め常時スタッフがおり、何か起きれば対応することも可能だ。

 この女性の場合、家賃(10万1000円)▽管理費(9500円)▽緊急時の対応をする生活支援費(1万500円)のほか、要支援2で小規模多機能型居宅介護を月8475円の負担で受けている。費用は月約13万円。8475円は、訪問介護で身体介護を自費で2時間受けたのとほぼ同じ金額だ。それで1カ月間の安心が得られる。

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 政府は今後、高齢者向け賃貸住宅と介護拠点を一体とした新たな住まいを整備する方針だ。欧米に比べ日本は、ケア付き住宅の整備が大きく遅れている。高専賃はこの分野で一翼を担うことが期待されているが、現状では負担が高額になるなどの課題もあり、「終(つい)のすみか」となるにはまだ遠い。【有田浩子】
 ◇「フル介護」望むなら有料ホーム

 高専賃で訪問介護を受けながら暮らす場合と、介護付き有料老人ホームに入った場合で、月々にかかる費用はどれぐらい違うのか。要介護3で介護付き有料老人ホームに入居している高齢者(78)のケアプランと同様のサービスを高専賃(在宅介護)で受けたのと置き換えて比べたのが<上>の表だ。

 高専賃のほうが1000万円以上高い。介護費用の月額が約92万円もかかるためだ。しかし実際にこの水準のサービスを受けられる人は少ない。負担できる費用には限りがあり、大幅にサービスをカットせざるを得ないのが現状と言える。この場合、介護費用月額を10万円まで削ったとすると、2年間の費用は家賃も含め552万円。これだと有料老人ホームに入居するより1000万円近く安くなる。

 高齢者住宅財団の08年3月末の調査では、都道府県に登録された高専賃の平均住戸面積は31平方メートルで、有料老人ホームなどより広めだ。家賃は平均8万9000円だが、中心価格帯は7万?10万円となっている。敷金以外の一時金(礼金など)は多くは50万円未満だが、なかには1000万円を超えるケースもある。85%の物件で「食事提供」「入浴、排泄(はいせつ)などの介護」「安否確認」のいずれかのサービスを提供しており、三つすべてを提供している物件も半数近くある。生活科学運営・広報部の八木真寿美さんは「すべてお任せしたいなら有料老人ホームに入居するに越したことはない。高専賃の場合は老後の住まいに何を求めるのかを高齢者自身がよく考えて選択することが重要だ」と指摘する。【出典:毎日新聞】

いま人気が出てきている高専賃。政策的にも進められている。たが、成熟していないためか、慎重に選択する必要がある

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