10 月 11 2008
寛大な被害者に感謝、75歳の元タクシー運転手
「本当にお気の毒です…」
高齢のタクシー運転手が起こした人身事故。タクシー会社の営業部長が、19歳の被害者男性に、裁判が開かれることを伝えると、被害者はこう話したという。「刑務所に行ってほしいとか、厳しい罰を受けてほしいという気持ちはない。ただ車を運転するときは、歩行者の気持ちを第一に考えてほしい」。証人として出廷した営業部長の口から、この話を聞いた被告は「本当にありがたい」とのどから声を絞り出すようにして答えた。
東京都杉並区の交差点で、赤信号を見逃し、横断歩道を自転車で横断中の男子高校生(当時18歳)に衝突、けがを負わせたとして、自動車運転過失致傷の罪に問われた元タクシー運転手の男性被告(73)の初公判が6日、東京地裁で開かれた。150センチにも満たない小さな体で、濃いグレーのスーツに身を包んだ被告は、拳をしっかりと握りしめたまま、うつむきながら話を聞いていた。
検察側の冒頭陳述などによると、事故が起きたのは平成19年12月3日。当時、タクシーの運転手をしていた被告は、小田急線成城学園前駅で男性客2人を乗せた。「忘年会があるので急いでくれ」という客の要望で、近道を選びながら目的地に向かったが、店を探すのに気を取られた。交差点の赤信号を見逃し、横断歩道を横断する自転車に衝突。被害者は骨折など全治2カ月のけがを負った。
被害者の温かい言葉が伝えられた営業部長の証言後に行われた検察官と裁判官の追及は、厳しいものだった。
検察官「事故後、被害者に会ったことは」
被告「2回あります」
検察官「会って、何をしたのですか」
被告「『けがの具合はどうですか』と聞きました。しかし、逆に励まされました」
検察官「被害者は、昨年の12月に事故に遭っていて、そのときは高校生でした。今は予備校生ですが、大学入試がどうなったか知っていますか」
被告「いえ、知りません」
検察官「被害者は事故に遭ったことで、センター試験に失敗しているんです。そういうことは聞いてますか」
被告「そうですか…」
受験シーズン真っ最中の高校3年の12月という重要な時期に、事故に遭った被害者は、事故によるけがで大学受験に失敗したことを被告には伝えていなかったようだ。
検察官「被害者自身が運転免許を取ることについて、どう思っているか聞いたことはありますか」
被告「聞いたことはありますが、答えるのを嫌がってました」
検察官「被害者は『自分では免許を取らない』と言っているんですよ。被害者にとっては、どうしても口に出せないことがある。今回の事故は、被害者の人生に大きな影響を与えたんですよ」
これまで知らなかった事実を知らされ、絶句する被告。検察官の言葉を聞き、自分が犯した罪の大きさを悟ったようだ。肩を落とし、うなだれる被告に裁判官は念を押すように言葉を継いだ。
「職がなく、年金暮らしで、お金がないのは分かりますが、お金がないなりに被害者にしなければならないことがあることは分かってますよね。よく考えておいてください」
母一人、子一人の家庭で育った被害者。父親は、皮肉にも交通事故で亡くしているという。被告に対する寛大な気持ちは、どこから来ているのだろうか。
被告には、この寛容な心に甘んじることなく、誠実な態度で残された人生を全うしてほしい。
判決は、今月10日に言い渡される。【出典:産経新聞】
この記事を読んで、何を思い、何を考えただろう。みんなが生き、みんなで生きている。学ぶべきことが多い
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