9 月 28 2008
福祉ナビ:障害者の自立訓練に粘土を使う意義は。
◆障害者の自立訓練に粘土を使う意義は。
◇心安定、自発性引き出す--自己表現に熱中、生きる力に
◇結果急がず、継続が重要大津市の嘱託職員、田中敬三さん(65)は、重度の心身障害児・者に粘土に触れる楽しさを伝えている。37年間の地道な取り組みをまとめた「粘土でにゃにゅにょ~土が命のかたまりになった!」が発刊された。田中さんは「どんなに障害が重くても必ず自己表現の可能性を秘めている。粘土には人間の素材のすばらしさや自発性を引き出す力がある」と言う。粘土の力とは--。
「今日もうまいこと粘土を丸めたなあ」「面白い形ができたやないか」
田中さんが笑顔で語りかける。大津市立やまびこ総合支援センターは琵琶湖を望む高台に建つ。その作業室で、重度心身障害者約10人が、自立訓練に取り組んでいた。その中心が粘土だ。
田中さんは04年5月から週1日、講師として2クラスで計約20人の障害者を指導している。粘土のかたまりを削り、ちぎって丸め、机にたたきつける--。扱いも、触れ方もさまざまだ。それまで動き回ったり、声を出したり、落ち着かなかった障害者でも2時間近く熱中する。「粘土は触れる人の障害や問題行動などを吸い取り、受け止め、心を安定させる不思議な魔力があるんです」と田中さんは目を細める。
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大学時代のボランティアがきっかけだった。
市内の重度心身障害児・者施設「第二びわこ学園」(現・びわこ学園医療福祉センター野洲)に通ったことが縁で1969年同園に就職した。粘土作品を見たのは別の知的障害者施設だった。
--生き物のように生き生きしている。
71年10月、一部の園生向けに粘土を使った取り組みを始め、その後、専用の粘土室も整備され全園生に広がっていった。
教え子の一人、自閉症の新見次郎さん(47)は26年前に入園し粘土と出合った。自宅のドアをけ破ったり、布団を破るなど破壊行動や多動、パニック症状が目立ち、自宅での生活が難しかった。
当初は粘土板に竹ぐしで絵を描くなど平面的な作品が多かったが、7年後には動物や魚など立体的な作品も作るようになったという。外へ向かっていたエネルギーが粘土創作に向き、精神的にも安定するようになった、と田中さんは振り返る。
次郎さんの父、俊昌さん(76)=大阪府枚方市、佛教大非常勤講師=が言う。「50歳近くなっても新しい作品を作り続けている。粘土が息子の潜在的な力を引き出し、成長し変化する力があることを証明してくれた。子の生きる力を実感できたのは何よりの喜びです」
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田中さんは03年2月末に同園を定年退職してからも重度心身障害者のデイケア施設活動を続けている。「粘土はどんな障害も幅広く受け止める懐の深さがある。結果を急がずコツコツ続ければ、障害者の可能性を掘り起こす力になる」
田中さんの新刊は岩波ジュニア新書で819円。タイトルの「にゃにゅにょ」は、粘土の「にゅるにゅる」「ねちゃねちゃ」した感触を表している。【出典:毎日新聞】
土いじりには、セラピー効果もある。お年寄りにもいい
粘土でにゃにゅにょ―土が命のかたまりになった! (岩波ジュニア新書)
著者/訳者:田中 敬三
出版社:岩波書店( 2008-07 )
定価:¥ 819
新書 ( 209 ページ )
ISBN-10 : 4005006027
ISBN-13 : 9784005006021
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