5 月 20 2008
はざまの中で:障害児施設の現場から/3 翻弄される子どもの福祉
昨年2月、八幡(やわた)学園(千葉県市川市)を訪れた父親は「退所願」と書かれた封筒を差し出した。中には「家計が厳しいので退所してやり直します」とつづった一枚の便せんがあった。1カ月後、浩二君(13)=仮名=は学園を去った。
知的障害のほかに自閉症も抱え、環境の変化に対応するのが苦手だった。住み慣れた学園を離れる戸惑いからか、迎えに来た父親の隣で、何度も両手で自分の頭をたたいた。
父親は全国展開する大手飲食店の店長。給与は日割りで「収入が減るから休めない」と学園職員にこぼしていた。月収は20万円程度。母親は長くうつ病を患っている。
浩二君は契約制度を適用された。親の負担は月約3万円。福祉サービスを利用する障害者に原則1割の自己負担を課す障害者自立支援法に批判が高まり、国は07年4月から負担軽減策を導入すると決定。学園は「少し待てば負担は半分程度になる」と慰留したが、父親は「それでも負担がつらい」と告げた。
ある職員は「これからという時期だった」と振り返る。05年6月の入所当初は、自閉症児に多い、金切り声を上げるパニックが日に何度もあった。その頻度が減り、「パニックになる根本原因を探り出し、より適切な支援を目指していた」(職員)矢先の退所だった。浩二君を気遣い、学園は退所後も何度か父親に電話したが、応答はなかった。
昨夏、父親は扶養手当の手続きのため、東京都の児童相談所を訪ねた。学園がそれを知り、「(浩二君は)どうしていますか」と問い合わせたが、担当の児童福祉司は「父親に聞いていないので知りません」と答えるだけだった。
自立支援法の施行後、学園に入所した子どもは約10人。高所得か、家族が入所すれば生活保護費が加算される世帯ばかりだ。「契約では、子どもの福祉より、親の都合が優先されてしまう」。翻弄(ほんろう)される子どもの姿に、職員たちのやるせなさが募る。=つづく【出典:毎日新聞】
なぜ、こんなことに。。。
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