4 月 24 2008
ニュース追跡:相次ぐ生活保護申請受理拒否 出し渋る自治体 /埼玉
◇ケースワーカー不足背景に
◇自立支援できず
06年8月まで三郷市に住んでいた女性(49)と家族が、生活保護申請を違法に拒否されたとして、市を相手取って損害賠償を求める訴訟をさいたま地裁に起こしている。支援の弁護士らは「自治体に生活保護を認めようとしない体質がある」と批判する。一方で、福祉事務所のケースワーカーからは「人手が足りず、保護世帯の自立支援ができない」との声も聞かれる。生活保護世帯は増える一方だ。行政の現状を探った。
訴状などによると、女性は三郷市内のアパートで運転手の夫(50)らと生活していたが、04年12月、夫が白血病で入院。収入が絶たれ、女性は生活の不安から体調を崩した。家賃や光熱費を滞納し、生活保護を受けようと市に約1年半通ったが、認められなかった。06年6月に弁護士同伴で申請して受理されたが、今度はたまった家賃について相談したケースワーカーから「家を出ていくしかない」と説明された、という。女性は「なかなか申請を受け付けず、保護を受ける権利を侵害された」と主張している。
市側は「女性は相談に来所していたが、保護申請をしていない」と反論し、全面的に争う姿勢を見せている。
■ ■
自治体が生活保護を出し渋る背景に、ケースワーカーの不足があると指摘される。
05年版の厚生労働白書は、ケースワーカーの数が慢性的に不足している実態を報告した。社会福祉法は、ケースワーカー1人が担当する生活保護受給世帯数を「80世帯以下」と定めるが、これを満たすには全国で1198人不足していた。県内は、ケースワーカー1人当たり平均86・9世帯(07年9月)。三郷市は83・1世帯(同)、最多の川越市は130・1世帯(同)に達している。
県内の30代のケースワーカーの男性は、04年度まで100世帯以上担当していた。家庭訪問や書類作成に追われて連日午後11時ごろまで残業し、休日出勤も珍しくなかった。「自分の肩に100世帯の生活がかかっていると思うと、心理的負担が大きかった」と振り返る。
05年度からケースワーカーが増員され、担当世帯は約80世帯に減った。「毎年増員を要望したが、なかなか受け入れられなかった。担当世帯が100を超えると『何とか窓口で食い止めよう』という気持ちになっても、不思議ではない」と漏らす。
日本弁護士連合会が06年に設けた「全国一斉生活保護110番」には、「所持金がなくなってから来なさい、と言われた」など、自治体の窓口で追い返されたという訴えが相次いだ。日弁連は、申請が認められなかった180件のうち118件について、自治体の違法性を指摘している。
さらに、生活保護にかかる費用が増大している。
県内の生活保護受給世帯は92年度から増加に転じ、06年度は約3万6000世帯。生活保護費の総額も増え続け、年間約924億円と10年間で約2・4倍に膨れ上がっている。
女性の原告弁護団の一員で、「首都圏生活保護支援法律家ネットワーク」共同代表の猪股正弁護士は「社会保障費を削減しようと、自治体の現場が締め付けられている。財政的問題も一つの背景にあることは間違いない」と指摘する。
■ ■
生活保護制度の目的は「最低限度の生活の保障」と「自立の手助け」だ。先のケースワーカーの男性は「困っている人を助けたいとケースワーカーになった。でも80世帯も担当すると生活実態をつかめず、十分なアドバイスができない」と嘆く。
厚労省は03年、生活保護制度を点検するため、現役ケースワーカーや専門家を交えた専門委員会を設置した。委員会は「自立と就労を支援する観点から制度を見直すことが重要」と提言。国は、自治体が受給者の自立や就労を後押しする際の指針となる「自立支援プログラム」を示した。
これを受け、東京都板橋区は06年度から「引きこもり」「多重債務」など、困窮の理由に合わせて16の支援プログラムを作成し、病院や学校と連携しながら運用している。だが、支援プログラムがない自治体もあり、取り組みにはばらつきがある。
委員会のメンバーだった布川日佐史静岡大教授(労働経済論)は「板橋などの取り組みは現場を変えるモデル。ケースワーカー同士の連携を強化し、NPOなど外部の専門家を交えて組織的に受給者を支援する取り組みが必要だ」と話す。
生活保護は国民の命を守る最後のとりでだ。進展する格差社会の中で、生活保護制度も変わらざるを得ない。
………………………………………………………………………………………………………
◇107万世帯が受給−−生活保護制度
生活保護は、世帯収入が国の定める最低生活費を下回った場合、不足分を支給する制度だ。費用の4分の3を国が、4分の1を自治体が負担する。最低生活費の基準は年齢や地域で異なる。3人世帯(33歳夫、29歳妻、4歳の子)の場合、最も高い東京都区部やさいたま市、川口市などで月額18万170円。
全国の受給世帯数は92年度に過去最低の約58万6000世帯だったが、その後は年々増え続け、06年度は約107万6000世帯に達した。保護費の総額も91年は約1兆2800億円だったが、06年は約2兆6300億円と2倍以上に増加し、国や自治体の財政を圧迫している。【出典:毎日新聞】
最後のセイフティーネットが機能していない。ハードも、ソフトもおかしい
Popularity: 12%
【関連記事】
《投稿記事ランキング》適当な★数でクリックしてください
《ソーシャルブックマーク》それぞれのアイコンをクリックしてください









