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4 月 22 2008

揺れる障害者福祉:自立支援法2年 1〜6

Published by webmaster at 20:30:25 under NEWS Selection

1 授産施設利用にお金がなぜいるの? /和歌山

◇何が自立、不安だらけ−−42歳の岡田さん
 「一生懸命働いているのに、なぜお金を払わないといけないの?」。和歌山市の知的障害者通所授産施設「はぐるま共同作業所」を利用する岡田正雄さん(42)はこの2年間、思い続けている。
 ほぼ毎日、朝5時に出勤して約6時間、パンを焼いて販売する。「仲間に会えるし、仕事も楽しい」と言うが、施設の利用料を払うことが強い疑問だ。

 収入は月6万6000円の障害基礎年金と、月3万5000円の工賃(賃金)。支出はケアホームの家賃や生活費計約7万円のほかに、作業所利用料や給食費など計約1万3000円の負担が重くのしかかる。頼れる肉親はいない。「将来のための貯金もできず、1人の生活になるのが怖い」と不安を抱える。
 県障害福祉課によると、県内の認可施設で障害者が受け取る平均工賃は月額1万2045円(06年度)。中には時給6円の施設もある。別の作業所に通う男性(23)は「利用料を取る前に、賃金保障をして」と訴える。
 障害者自立支援法は、福祉サービス利用者に自己負担1割を求め、給食費などの実費負担を課した。低所得者には負担上限額があったものの、すぐに「生活していけない」と困窮の声が続出。国は上限額を4分の1に見直し、年収80万円以下の人の上限額は3750円になった。今年7月からは、さらにそこから2分の1に引き下げる。
 だが、収入の少ない障害者にとっては1円の支出も深刻だ。岡田さんは言う。「お金だけとられて、その分の支援は何一つ受けられない。一体、何が自立なのか。不安だらけの毎日はもうたくさん。1日でも早く施行前の生活に戻してほしい」
   ×  ×
 障害者自立支援法施行から2年。「障害者の社会参加」の理念とは裏腹に、「自立」が見えない現状と将来に不安が広がっている。揺れる障害者福祉の今を現場から報告する。
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 ■ことば
 ◇障害者自立支援法
 「施設から地域へ、福祉から就労へ」を理念に、障害者の地域社会での自立を目指す。身体、知的、精神に分かれていた障害者施策を一元化。福祉サービスの従来の利用者負担は収入に応じて決めたが、施設利用やヘルパー派遣などあらゆるサービス利用者に、利用料の1割の自己負担を原則とした。サービス支給決定の指標として、6段階で判定する「障害程度区分」を導入した。06年4月に利用料負担など一部施行、10月から完全施行。

2 移動支援の自治体格差 /和歌山

◇楽しみ奪われる、悔しい−−36歳の女性
 「住所が違うだけで受けられるサービスが違うのは不公平」。下肢障害のある和歌山市の女性(36)は憤る。障害者自立支援法の施行で、ヘルパー利用時間が大幅に減った。障害程度は変わらないのに、同じ作業所に通う紀の川市の仲間は3倍支給されている。
 女性は車椅子生活で、外出にはヘルパーの付き添いが必要だ。同法施行前、ヘルパー利用は月35時間。料理教室への送迎など自由に使えたが、06年4月の同法施行を境に、私的な理由で使える時間が月10時間に制限。それ以上は全額自己負担となる。外出は減り、家にいる時間が増えた。
 同法で、障害者の社会生活に不可欠な「移動支援」は市町村事業になった。このため、支給時間や利用条件など自治体の対応に格差がある。例えば、和歌山市が18歳以上の私的理由による利用を月10時間としているのに対し、紀の川市は制限がない。「友達の家にも気軽に行けない。楽しみまで奪われるのが悔しい」と女性は言う。
 和歌山市は利用者の声を受け、今月から移動支援などの支給決定基準を緩和。18歳以上の場合、単身世帯や障害者のみの世帯などは月10時間を20時間に増やした。
 一方、ヘルパーを派遣する事業所では収入減も起きている。和歌山市社会福祉協議会は、障害者へのヘルパー派遣利用時間が799時間(05年5月)から637・5時間(07年5月)に激減。07年5月の収入は約129万円で、05年同期比3割減となった。
 同市障害福祉課は「私的理由でのヘルパー利用は個人差がある。特別な事情を除き、過去の平均利用時間に基づいて、公平公正なように一律10時間とした。今後も利用者の声には耳を傾けたい」と説明する。
 趣味を持ち生活の幅を広げようとするヘルパー利用は、そうした人たちにとって著しく制限されている。和歌山市障害児者父母の会事務局長の岩橋秀樹さん(49)は「当事者であるはずの障害者が置き去りにされている。利用者の立場にたった制度を考えて」と訴える。
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 ■ことば
 ◇移動支援
 社会生活上、必要不可欠な外出や、余暇活動など社会参加のための外出時の移動を支援する事業。厚生労働省は「全国一律でなく、地域の実情に応じ柔軟に提供すべきサービス」として、障害者自立支援法で市町村主体の「地域生活支援事業」に位置づけた。利用料や利用範囲は、各市町村が独自に定める。

3 存続を模索する小規模作業所 /和歌山

◇生き残りに選択肢ない--5人通所副理事長
 5人の知的障害者が通う和歌山市の小規模作業所「ひぃふぅみぃ共同作業所」。06年に長屋の一室で開所し、地域の障害者の交流の場となっていたが、今月、別の地区に引っ越した。従来の約3倍の広さで、家賃は20倍以上。安定した運営を求め、新体系移行を目指す第一歩だった。
 開所当時は利用者3人。公的補助はなく、保護者の寄付などで月5000円の工賃を賄った。利用者5人となった昨年から年約350万円の市の補助を受けるが、運営は厳しい。障害者自立支援法に基づく「地域活動支援センター」になれば、年間600万円程度の補助が見込める。
 定員20人以下の小規模作業所は、地域の重度障害者の受け皿として80年代に全国に広がり、現在、6000カ所近くある。法定外のため、多くは経営が不安定だ。全国の作業所でつくる「きょうされん」(東京都)によると、小規模作業所への公的補助の全国平均(05年)は年間で、都道府県約400万円、国110万円だった。
 しかし同法施行に伴い、国は06年4月、補助を打ち切った。新たに補助を得るには移行が原則だが、5年以上の実績や10人以上の利用者など条件がある。ひぃふぅみぃ共同作業所の尾崎直加副理事長(52)は「新しい場所で、なんとか利用者を増やしたい」と話す。
 条件を満たせず、移行の見通しが立たない施設もある。岩出市の「共同作業所ぷちこすもす」は利用者1人。すべてを自主財源で賄う。井原啓子理事長(54)は「1人でも利用者がいる限り、存在理由がある。資金の無い小さな作業所にこそ補助が必要」と訴える。
 県は07年度から2年間の期限付きで、移行を考える小規模作業所に上限250万円を補助。県障害福祉課は「経営安定のため、補助を活用して早めに移行してほしい」とするが、この補助を受けるにも、実績や定員数などの条件がある。
 尾崎副理事長は言う。「移行して、今までのように仲間の居場所であり続けられるか不安はある。それでも、生き残るために、私たちに選べる選択肢はない」。地域の障害者福祉を支えてきた小規模作業所は、存続の道を模索している。
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■ことば
◇新体系移行
 障害者自立支援法の施行で、障害種別に33あった従来の施設・事業体系を、各サービスの機能や目的に合わせて「六つの日中活動」に再編。療養介護、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、地域活動支援センターがある。06年度から5年間の経過措置が設けられ、国や自治体から補助金を受けるためには、その間に移行先を決めなければならない。複数の事業選択も可能。

4 日割り化で収入確保に苦慮 /和歌山

◇「商売じゃないのに」作業所管理者
 「利用者の顔色をうかがいながら、実績を上げないといけない。福祉は商売じゃないのに」。和歌山市の「いこいの家共同作業所」管理者の上田朋行さん(38)はため息をつく。障害者自立支援法が始まった06年4月から施設報酬(補助金)の算定が月額から日額になったため、収入確保に苦しむ。
 同作業所は07年4月、新体系に移行。定員30人を40人に増やし、土日に仲間が集まりやすいイベントを開くなどして収入増を図る。支援計画の作成や目標達成の評価など事務作業も増えた。07年度の収入は前年度を維持したが、「職員の負担がこれ以上大きくなれば、支援の充実が図れない」と上田さんは言う。
 報酬の日割り化は、施設の運営に深刻な影響を与えた。利用者が1日休めば、その分の施設報酬が減る。また、施設報酬の1割はサービス利用料として利用者負担となるため、来てもらう回数が増えれば、利用者の支払いも増えるという板挟みにも苦しむ。
 岩出市の「きのかわ共同作業所」では、収入が05年度約5600万円から06年度約4700万円に激減した。同年から職員の昇給を凍結し、ボーナスもカット。小畑和江施設長(55)は「新しく人を雇う余裕もない。利用者が単価に見えてくる現実がつらい」と漏らす。
 国は06年12月、事業所の経営基盤の強化のため、08年度までに限り、前年度収入の9割保障を打ち出した。さらに、今月から通所サービス事業の報酬単価を4・6%引き上げ、定員を超す受け入れも可能人数を拡大した。しかし、いずれも時限的で、今後の見通しは立っていない。
 経営難でしわ寄せを受ける福祉の現場。山崎由可里・和歌山大准教授(障害者教育史)は「仕事に見合った給料が保障されず、福祉職をとりまく労働環境は悪化しており、福祉の先細りが懸念される。安定した施設経営ができるよう、根本から法を見直すべきだ」と指摘している。
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 ■ことば
 ◇施設報酬の日割り化
 国や自治体は施設定員に応じた定額の月払いで施設に補助したが、障害者自立支援法施行で、利用日数に応じた日割り計算に変更。利用者1人当たりの報酬単価は、利用するサービス内容や障害程度区分などで決める。事業所は定員以上の利用者を登録できるが、一定の基準を超えると報酬単価が減らされる。

5 就労強化と工賃アップ /和歌山

◇両立困難で事業断念--元作業所長
 午前10時。和歌山市の「くじら共同作業所」に、焼きたてのパンの香りが広がる。聴覚障害のある泰地哲夫さん(53)が毎朝7時に来て、生地作りから成形までこなす。「パンが売れるのはうれしいけど作業は大変。給料もなかなか上がらない」と表情を曇らせる。
 07年4月、障害者自立支援法に基づく新体系のうち、「就労継続支援」などを行う事業所に移行し、パン作りを開始。菓子作りが主だった移行前に比べ、売り上げは月約5万円伸びた。だが、利用者が2倍に増えたため、1人当たりの工賃は変わらない。白藤令所長(59)は「障害の程度によって、仕事の内容や量に差があるのは当たり前。工賃を上げようとすれば、負担が偏る」と言う。
 就労支援は同法の柱の一つ。一般企業への就労率の高い事業所や目標工賃を達成した事業所に対し、報酬を加算するなどして就労促進を図る。県は「障害者就労支援5か年計画」(07~11年)を策定。求職活動の支援や施設職員の指導力向上などに取り組むが、作業所からは「無理な労働で利用者に負担をかけるのが心配」といった声が上がっている。
 別の課題もある。すさみ町の「いなづみ作業所」は07年5月、移行から半年で「就労移行支援」事業を断念。能力の高い3人が就職で退所し、仕事が回らなくなった。利用者減で施設報酬も月約50万円減り、他のサービスを提供する事業所として再スタートした。
 当時、所長だった石神慎太郎さん(36)は「仕事のできるエース的存在を次々と外に出せば、作業所の労働力は落ちる。就労の強化と工賃アップは両立しない。就労に力を入れるほど、自分の首を絞めることになる」と指摘する。
 県障害福祉課は「事業所には、仕事のできる人材を育てる努力が必要。職員の意識改革を図り、支援体制を整えたい」とする。「障害者就業・生活支援センターつれもて」の加藤直人所長(51)は「障害の程度には個人差がある。労働量が限られる利用者にこそ支援が必要」と訴える。
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■ことば
◇障害者の就労支援事業

 障害者自立支援法施行に伴い、就労支援事業を、就職を目指す「就労移行支援」と、一般企業で働くことが難しい人を対象にした「就労継続支援」に再編。「就労移行支援」は利用期限2年で、作業訓練や職場実習、職場探しを行う。「就労継続支援」は雇用契約を結ぶA型と結ばないB型の2種類あり、働く場を提供しながら訓練する。利用期限はない。

6止 支援を限定する障害程度区分 /和歌山

◇「不透明」「信用できない」戸惑う保護者ら
 「一人で歩けますか?」。知的障害の女性利用者(33)についての調査員の質問に、和歌山市の「くろしお作業所」の鈴木栄作施設長(40)は疑問を感じた。「できるできないを聞くだけで、どういう介助が必要なのかを聞く項目がない」
 障害者自立支援法の施行で、福祉サービスの利用に、障害程度区分の認定が必要になった。106の質問項目のうち、体の不自由さなどを問う要介護認定基準が8割近く。このため、知的、精神障害者の場合、障害程度が正しく反映されないケースが生じている。
 女性は中程度の区分3に認定。重度の自閉症で、感情の変化に応じた介助を必要とする。鈴木所長は「あまりに軽い。障害の程度は介護基準で測れない。根拠のない不透明な区分だ」と憤る。不服申し立てにも、複雑な手続きが必要なため、できないままだ。
 認定区分は利用できるサービスを決める指標となり、低く判定された場合は支援も制限される。例えば、ケアホームは区分2以上、重度訪問介護は区分4以上が対象。また、利用者1人当たりの報酬単価を決める基準にもなり、事業所にとっては収入にかかわる。
 認定は調査状況にも左右される。知的障害のある和歌山市の明渡哲人さん(28)は06年10月に区分4と判定されたが、3カ月後の再調査で5になった。2回目は、利用するケアホームの世話人が立ち会い、別の調査員が行った。母美津子さん(53)は「ころころ変わる区分は信用できない」と戸惑う。
 県の10障害者団体は07年10月、個々の障害者の生活ニーズに基づく支給決定の仕組み作りなどを国に求めるよう県に要望。厚生労働省障害福祉課は「より正確に障害特性を判定できるよう、区分の見直しに向けた実態調査の準備を進めている」と説明する。
 金川めぐみ・和歌山大准教授(社会保障法)は「最大の問題は認定の判断で支援が限られること。本人が自由に意思決定できる『自律』こそ障害者の自立であり、逆行している。生活における支援の必要度を反映する認定の見直しが必要だ」と話している。
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 ■ことば
 ◇障害程度区分
 障害者自立支援法で、サービス利用の際に必要となる認定。障害程度別に6段階に分け、数が多い程重い。認定調査員による106項目の聞き取り調査を基に、コンピューターで1次判定。特記事項や医師の意見書などを考慮して学識経験者らでつくる審査会が2次判定し、市町村が区分を認定する。認定調査員は市町村職員や市町村が委託する相談支援事業者などが担当する。
【出典:毎日新聞】

自立支援法が施行されて2年。「自立支援」とは遠い内容だ。財政と言うことだけをにらみ、将来的には介護保険との統合をもにらむ。障害者福祉版の「長寿医療制度」のようなものだ。受益と負担。確かにサービスを受ける限り負担がいる。でも、生きていくのに必要なサービスとそうでないサービスとは違うはずだ。それをなにかも一緒に、ただ数字だけで考えるから混乱が起きる。負担が重くなる。自立支援法から二年。総括を忘れてはいけない

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