3 月 25 2008
誤認逮捕福祉訴訟 知的障害者に申請主義の壁
強盗事件で誤認逮捕・起訴され、公判中に真犯人が現れ無罪となった重度知的障害のある吉田清さん(56)=宇都宮市=側が、福祉行政で必要な支援をしなかったとして同市に慰謝料約八百二十万円の支払いを求めた国家賠償請求訴訟。宇都宮地裁が「本人からの相談や申請がなかった」などを理由に原告の請求を棄却した判決が、福祉の現場で波紋を広げている。知的障害や精神障害、認知症などの場合は本人申請自体が難しく、行政に「申請主義」にとらわれない積極的な対応を求める声は少なくないからだ。吉田さん側は十二日に控訴した。
●主張と判断
原告側弁護団によると、吉田さんは誤認逮捕される前、一方的に養子縁組された男から障害年金を横領されたり虐待を受けていた。市職員は同じアパートにいた別の知的障害者からの訴えなどがあったのに調査しておらず、成年後見人の選任など適切な支援があれば、誤認逮捕も防げた可能性があると主張した。
しかし宇都宮地裁は吉田さん本人が市に相談や申請をしなかったことや、横領や虐待の事実を「市が積極的に介入すべき緊急の事態にあったとは認めるに足りない」などと市側の主張を認め、原告側が敗訴した。●疑問
県警と宇都宮地検の違法捜査を問題視した誤認逮捕・起訴訴訟で同地裁は、吉田さんの障害程度を「名前以外の漢字、ひらがなは書けず、計算もできない」などと認定。一方で福祉行政訴訟では吉田さんが「申請しなかった」ことなどを理由に原告の主張を退けた。こうしたことが、吉田さんを支援する金子晋也障害者支援施設長の目には「矛盾している」と映る。
県障害施設・事業協会の菊地達美会長は行政側に頼まれ、窃盗を繰り返していた障害者を施設で受け入れたことがある。「障害者本人の申請がなくても、状況から考えて支援が必要なケースはある」と訴える。また元県職員の山田昇佐野短大教授(地域福祉)は「制度の手続きを理解できない人の福祉サービスを受ける権利はどうなのか」と判決を疑問視する。●支援体制
原告側の控訴に「引き続き正当性を主張していく」としている市側。しかし二〇〇六年には福祉サービスが必要な障害者の早期把握と権利擁護の推進を目的に「市障がい者地域生活支援研究会」を発足させ、今年一月までの会議で相談支援体制の強化などを確認した。
市障がい福祉課は研究会について「問題発覚前から予定されていた」と、誤認逮捕との関連性を否定する。だが話し合いのテーマは、当時の吉田さんのように支援が届いていない障害者への対応だった。
研究会の委員だった金子さんは「吉田さんは今、支援を受けられている。でも市全体の福祉を向上させるには控訴が必要だと思った」と議論の深まりを求めている。【出典:下野新聞】
権利なのに「申請」をしなければならない。本当におかしな国だ
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